砂漠の中にぽつんとたたずむキララ文庫

店も開店してそろそろ4半世紀になる。開店当時に生まれた子供が漫画を読む年令になって店に通い始め、やがて漫画を卒業して社会に出て行く。しばらくして結婚し子供が来て今度はその子供が店に出入りする・・そんな時間が何度も繰り返しこの店では過ぎていった。かつては店の隣りには酒屋、食堂、喫茶店があって賑わっていたがもう閉店して久しい。それでもキララ文庫の開店と時を同じくして営業を始めたラーメン屋さんは頑張ってきた、熊本では珍しい醤油ラーメンの店で、ボリュームもたっぷり、値段も安く学生に人気の店だった。キララとこのラーメン屋さんで何とか励ましあいながらこの20数年営業を続けてきたがついにこの12月に閉店することになった。
話を聞きつけてこれまでこの店にお世話になったかつての学生さんや常連客が連日押しかけ、店は座るところもないほどの忙しさだ。しかしそれも間もなくおしまい。そこの店長さんから「キララさんは何とか続けて下さいよ」という声をかけてもらった時は、思わず涙がこぼれそうになった。
キララのすぐ近くには永年営業を続けてきたコンビニがある。ここにも随分お世話になった。両替金が足りない時にくずしてもらったり、立ち読みしたり、おにぎりを買ったり・・ここの店長さんもよく子供を連れてうちの店に話に来てくれていた。
この店も二日前に突然閉店してしまった。寝る間も惜しんで営業努力を重ね、この不況時に黒字となっている採算店だったのに、すぐ近くに系列のコンビニが出来るというので、コンビニの本部は闘わずして撤退を決定。アオリを受けたのがこそこの店長さんというわけだ。
そのせいで夜になるとキララの周りは本当に暗くなった。まるで砂漠の中にぽつんとたたずむ店のようでなんともさびしい限りだ。キララ文庫ももういつまで続くかわからなが、色んな人たちから託されている思いがある限り続けようと思っている。売り上げはますます減っていく一方だけどね