朝日新聞熊本版 視点@熊本 コラム最終稿(第10回)

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2012年、北九州市に「漫画ミュージアム」がオープンする。この種類の博物館としては九州初となる。構想段階から関心を持ってみてきたが、同市で重ねられた議論は今後、同様の施設を作るときの参考になる。
 注目したいのが、この施設の方向性に関する議論だ。資料の収集や保存、研究を重視する「アーカイブ型」にするか、漫画の閲覧や関連イベントなど情報発信を中心にする「アキバ型」にするか。両案で意見が割れたが、予定地がJR小倉駅近くで広さの問題などがあり、情報発信を重視することになった。同市を中心に大学や企業、市民が一緒に進めてきた構想なので、オープンが楽しみだ。
 熊本も負けていられない。この欄でも紹介した「マンガミュージアム構想」も具体化に向けて検討を進めている。まずは施設。北九州との差別化を考えると、アーカイブ機能の充実が需要だが、広大なスペースの確保が必要になる。新たにハコモノを建てるのではなく、廃校や自治体合併で使わなくなった庁舎などの有効利用を考えている。漫画を使った町おこしを進める自治体との連動も検討中だ。
 蔵書は当面10万冊、最大で50万冊を目指したい。既存の施設では、京都国際マンガミュージアム20万冊、現代マンガ図書館(東京)18万冊、、米沢嘉弘記念図書館(同)12万冊とされる。アーカイブは数がモノをいう。できる限り多く集めたい。
 収集の方法は、個人コレクションの寄贈を基本にしたい。北九州でも広く市民に呼びかけている。本の処分に抵抗がある▽家族のコレクションの扱いに困っている▽閉店した貸本屋や古本屋、漫画喫茶店。こうしたケースは結構あるので、かなりの数が集まるはずだ。本の選別と運搬も問題になるが、ボランティアの力を借り、運搬費用も原則として寄贈者負担にすれば、何とか解決できそうだ。
 こうして出来るだけ費用を抑えた手作りのミュージアムを立ち上げたい。そこで心がけたいのは、研究者に使い勝手のよいアーカイブの提供▽気軽に漫画が読めるような利用料▽海外からの訪問者も利用しやすいサービスの充実などだ。そうすれば、熊本は漫画の聖地となり、ひいては地域に活力を生むことになると信じている。
 ミュージアム構想にご意見があれば、キララ文庫にご連絡を。〒860・0862 熊本市黒髪6の9の9、電話・FAX(096・345・4991)、電子メール(kirara@s6.kcn−tv.ne.jp)。
 (橋本さんの連載は今回で終わります)

●プロフィール
 はしもと・ひろし 1987年から熊本市で漫画古書店「キララ文庫」を営む。現在、漫画ミュージアムの県内設立に向けて奮闘中。時代を超えて読み継がれる作品を愛する「漫画バカ」。