風呂屋での事件

機能は久々に時間が取れたので孫を連れて近くの銭湯に行く。お風呂が大好きなこの子のはしゃぎようったらなかった。しかしそこでとんでもない事件が・・

2歳半の孫がトイレから私が出てくるのを待っていたときに指がドアの隙間に挟まってしまいどうしても抜けなくなってしまったのだ。その場に居合わせた人たちが必死で助けようとするがどうしようももなく、激痛に耐えかねた孫の声が風呂屋全体に響き渡る。こんな狭い隙間に指が入ってしまうとは誰も想定していなかったのか、風呂屋のスタッフ達もただうろたえるばかりで何もできないまま時間が過ぎていく。ちいさい子どもが痛みに耐えかねて泣いているいる姿はとても正視に耐えられるものではない。しかもその子が自分の孫というのだから胸が張り裂けそうな思いでただ見守るしかなかった。
そのうち誰かが鉄製の金具をどこかから調達してきてドアの隙間にねじ込み、みんなで力を合わせて隙間を拡げてくれた。びくともしなかったドアがギギギと不気味な音を上げてきしむ。間一髪のタイミングでようやく指が外れた時にはその場で歓声があがった。みんないざとなったらこんなにも必死になって助けてくれるなんて・・思わず涙が出そうになったがぐっとこらえてみんなにお礼を言うのが精一杯だった。
 ようやく外れた指だったが見る見るうちに腫れてきた。泣きつづける子どもの声を聞きつけて若い男性がさっと子どもの手を握る。「誰か割り箸とガムテープ、それに氷を急いで持ってきてください。私は医者です。すぐに手当てをしないとこの子の手は動かなくなるかもしれません。すぐに救急車を手配してください」という的確な指示が飛ぶ。
この時ほど医者という存在がありがたいと思った時はなかった。駆けつけた救、急車に飛び乗り大急ぎで国立病院へ。この間ずーっと泣きつづける子どもを前に、何もしてあげられない自分の無力さを痛感するばかりだった。

幸い骨に異常はなく、後遺症も残らないとのことでホッとしたが、子どもにとっても私にとっても忘れがたい一日になった。現場で力を貸してくれた皆さん、応急手当をしてくれたドクターにこの場を借りてお礼を申し上げたい。
「本当にありがとうございました。人の心の温かさが本当に身にしみました」