第8回 原稿  熊本マンガミュージアムプロジェクト

 本業は漫画の古本屋だが、くまもと・市民オンブズマン代表として、行政の不正な公金支出などをチェックする活動も続けてきた。だが正直なところ、告発ばかりをやっていたのでは疲れてしまう。
 そこで最近は、行政への提言活動も行っている。その一つが、漫画を使った地域おこし。天草や阿蘇のような観光地のPRに漫画を使ったり、県出身の漫画家のキャラクターを観光客の呼び込むに使うなどのアイデアだ。私の提言とは直接の関係はないが、水俣市は実際に、地元出身で「ストップ!ひばりくん」の作者、江口寿史が描いた観光ポスターを使っている。
 今後最も力を入れたいのが、漫画ミュージアムの設立だ。九州の中央に位置する熊本はかつて書籍流通の中心で著名な書店が市内にあった。その影響があるのか、地方都市としては地元出身の漫画関係者がかなり多い。代表例を挙げると、漫画家なら「ワンピース」の尾田栄一郎、「ケロロ軍曹」の吉崎観音、「ごくせん」の森本梢子、「愛と誠」のながやす巧、「あさりちゃん」の室山まゆみ、など。評論家も米沢嘉博藤本由香里、藤川治水らがいる。そんな漫画好きを生む土壌を生かし、漫画の図書館と博物館の機能を併せ持った施設を作りたい。実現に向けた企画「熊本マンガミュージアムプロジェクト」を9月に立ち上げた。
 道のりは長いかもしれないが、反応は上々だ。県庁や自治体の職員、図書館の司書、美術館の学芸員、書店員、大学教授などの幅広い漫画ファンが、プロジェクトの登録メンバーになってくれている。今月13日に熊本大学で開催された日本マンガ学会の九州交流部会でも、この話題で大いに盛り上がった。
 こうした活動を続けていると、「なぜ漫画に関するシンクタンクがないのか」という疑問が沸いてくる。漫画を大きな価値を生み出すコンテンツ産業と考えると、市場調査やコンサルティングの担い手の存在は不可欠だが、どこも手を上げていないようだ。需要は大いにあると思うので、大学や既存のシンクタンクがこの事業に本気で取り組んでくれるのを心待ちにしている。
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 「熊本マンガミュージアムプロジェクト」の会議が今月28日午後1時〜同3時、熊本市の熊本大文学部棟3階の「民俗学学生研究室」である。参加は自由。問合は担当の鈴木寛之氏に電子メール(suhiro@gpo.kumamoto−u.ac.jp)で。